2020.12.24
大澤範恭の理事ブログ『働き方改革』2020年12月22日号
今週のコラム「副業・兼業している医師の労働時間管理方法」(2020年12月22日号)
副業・兼業している医師の時間外労働について、今般、新たに連携B水準という新しい例外措置が提示されました。今週のコラムでは、この連携B水準を踏まえ、複数医療機関に勤務する医師に対する労働時間管理方法とその場合の留意点について、解説します。
2024年4月から始まる医師の時間外労働規制では、3次救急医療機関など地域医療を確保するために必要な医療機関は、医師の時間外労働が年1,860時間まで認められるB水準の適用が検討されていました。
それに加え、12月14日に開催された厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」において、新たに連携B水準というものが提示されました。
この連携B水準というのは、医師の副業・兼業先での労働時間と通算して時間外・休日労働の上限を年1,860時間とするもので、医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制を確保するために必要な役割を担う医療機関を指定して適用されることとされています。
この連携B水準の対象医療機関の主な指定要件は、次のとおりです。
① 医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制を確保するめに必要な役割を担う医療機関であること
(例)大学病院、地域医療支援病院等
② 36協定において年960時間以内の時間外・休日労働に関する上限時間の定めをしているが、副業・兼業先での労働時間を通算すると、時間外・休日労働が年960時間を超えることがやむを得ない医師が勤務していること
いずれの医療機関においてもA水準(診療に従事する勤務医に2024年度以降適用される水準:時間外労働は年960時間まで)が適用されている医師については、勤務するすべての医療機関での労働時間を通算した時間外・休日労働の上限は、年960時間までとなります。
しかしながら、いずれかの医療機関においてB・連携B・C水準が適用されている医師については、勤務するすべての医療機関での労働時間を通算した時間外・休日労働の上限は、年1,860時間までとなります。
医師の副業・兼業先の労働時間の把握については、医師の自己申告等により、労働時間数の見込や実績について、「主たる勤務先の医療機関」が把握することになります。
副業・兼業先との間の往復の移動時間は、各職場に向かう通勤時間であり、通常、労働時間に該当しませんが、遠距離の自動車の運転等で休息がとれないことも想定されますので、別に休息の時間が確保できるよう、十分な勤務間インターバルを確保するなどの配慮が必要とされています。
【複数医療機関に勤務する医師の労働時間の管理方法】
医師の副業・兼業には、主たる勤務先からの派遣によるものと医師個人の希望に基づくものがあります。
① 主たる勤務先(主に大学病院を想定)は、派遣先における勤務を含めて、時間外・休日労働の上限、連続勤務時間制限、勤務間インターバルを遵守できるようなシフトを組む必要があります。
② 医師個人の希望に基づく副業・兼業については、副業・兼業先の勤務予定を入れ、自己申告してもらいます。
③ 副業・兼業先で突発的な業務の発生等により予定していた時間より長く勤務してしまった場合には、原則として、随時、自己申告してもらう必要があります。
④ ただし、あらかじめ設定した上限の範囲内で労働している場合であって、連続勤務時間制限や勤務間インターバルが守られていて、代償休息が発生しない場合や、月の時間外・休日労働が100時間以上になるおそれがない場合には、翌月に1か月分まとめて自己申告することとしてもよいとされています。
多くの病院勤務医の皆さんは、複数の病院を掛け持ちで働いていると思われますので、各病院におかれては、まず、医師から副業・兼業先の労働時間等を自己申告してもらうルールを就業規則などに明記しておくことが必要です。
そのうえで、病院勤務医の皆さんに、当該病院で働くことのできる時間外・休日労働の上限と、副業・兼業先の病院と通算して働くことのできる時間外・休日労働の上限をよく理解してもらい、副業・兼業先の労働時間等をしっかり自己申告してもらうよう、周知徹底しておく必要があります。