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2023.4.6

医療業界News 2023年4月

桜の花が舞、街を艶やかに彩り、緑が一日一日と濃くなって気持ちのいい季節ですね!

新型コロナウイルスとの共生も進み、日常生活が戻ってきましたが、新型コロナウイルス感染者や感染疑いのある人が、医療機関を受診しようとした際に「対応していない」と言われ診療を断られる問題で、神奈川県は、五月に感染症法上の位置付けが二類相当から五類に変わった後に診療拒否があれば、医師法で定める「医師の応召義務」に違反する可能性があるとの見方を示しました。
患者側からすれば、「あのクリニックの診察券を持っているし、かかりつけ医だと思っていたのに、診療を一方的に断られた」と受け止めます。医療側と患者側との間で「かかりつけ医」に対する認識の違いが浮き彫りとなりました。

そんな中、政府は2月10日、かかりつけ医機能の制度整備などを盛り込んだ「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、加藤勝信厚労相は同日の記者会見で、今回の法改正について「地域においてかかりつけ医機能をしっかりと提供できる体制を構築していくことで、これからの高齢化に伴うさまざまな医療ニーズ等にも対応していく体制をまずは構築していくことが必要だと思っている」と述べました。

「かかりつけ医機能」は5項目から成り、その制度整備は、医療法で位置づけ、2025年4月1日の施行を目指すこととなります。

1.日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能
2.時間外診療を行う機能
3.病状急変時等に入院など必要な支援を提供する機能
4.居宅等において必要な医療を提供する機能、
5.介護サービス等と連携して必要な医療を提供する機能

自民党厚生労働部会で法案を審議した際、この「確認」の意味を巡って議論になり、再度議論し「行政処分を伴う行政行為ではない」として了承され、前厚労相の田村憲久氏は、「行政処分制はない」と説明しております。

 

上智大学教授・元厚生労働省局長の香取照幸氏は日経メディカルの紙面で、かかりつけ医制度の行方について、次のように話しております。

「現実に機能しているかかりつけ医・かかりつけ医療機関の実践例を見ていけば、様々な形の役割分担・連携でかかりつけ医機能を地域で実現していることが分かる。参考になるのが、2021年度の厚労省調査事業によって公開された「かかりつけ医機能に関する事例集」だ。この事例に挙げられている医療機関を見ると、かかりつけ医機能を全て兼ね備えたところは1つもなく、どの医療機関も周囲とチームを組んでいることが分かる。

1つ目は、医師個人の能力・資質の問題だ。専門外の診療科の疾患だったりして自らが対応できない場合に、しかるべき医療機関を紹介する「コンシェルジュ機能」を発揮するには、総合診療医のような多岐にわたる疾患を診る能力が必要だ。しかし、専門医としての総合診療医の育成にとらわれると、今のペースでは全く追いつかない。つまり、現有戦力でやるしかない。日本の開業医のキャリアパスを見ると、医局などで一定の専門医療の知識を身に付けた医師、つまり診療経験のある医師が開業する、というのが一般的だ。開業すれば自分の専門科以外の患者も診る必要があるわけで、結局は、OJTを通じて総合診療的な能力をある程度、身に付けている。これに医師会や病院団体などによる研修を組み合わせれば、日本の開業医にも十分かかりつけ医機能を果たす力があると考えられる。

2つ目は組織体としての医療機関の機能の問題だ。健康相談に応じる、何かあったときにソーシャルワーカーやケアマネジャーと連携できる、夜間対応ができる、夜間対応可能な医療機関と連携できるなどといったことは、医師個人というよりは、医療機関の機能の問題として考えなくてはならない。今後、かかりつけ医機能報告によってそれぞれの医療機関の果たせる役割が明確化されると考えられる。それを踏まえて、どうやって個々の医療機関が機能分担を行い、地域を面でカバーするかという仕組みづくりが重要な課題になるだろう。

3つ目はかかりつけ医機能を担う医師・医療機関を支えるインフラの問題。かかりつけ医がコンシェルジュ機能を果たすためには、その患者の医療情報や健康情報を一元的に把握していないといけないし、入退院支援や他院受診の際にこれらの情報を適切に、他院や多職種に提供しないといけない。そう考えると、情報連携の仕組みや患者のPHR(Personal Health Record)がいかに整備されているか、という話になる。これは別に医師の問題でも医療機関の問題でもなく、ネットワークやシステムといったインフラの問題になる。この部分をどう整備するかというのは、行政の仕事になる。

かかりつけ医を機能させるには解決すべき問題のステージが3つあるということだ。これら重層的な問題をクリアしてはじめて、切れ目のない医療が提供できるようになる。」

 

とても的確な指摘ですね。
そして最後にこのように話しておりますが、皆様は如何お考えでしょうか!

「やや近未来の話をするなら、例えば保険者が組合員の同意を取って地域の医師会や医療機関と包括契約を結び、初期診療の部分を別の診療報酬体系として包括払いにしつつ、その後の専門医療や処置・手術は、通常の診療報酬を適用する。一種、こうした米国のHMO(Health Maintenance Organization)のような仕組み、診療報酬特区のようなものを導入することは考えられるだろう。
かかりつけ医機能の実装というのは、効率化を目指した医療資源の再配置・再分配という側面もある。医療資源利用の最適化という意味で様々なステークホルダーの利益は一致しているはずだ。さらに言えば、医療資源の効率的な利用は医療従事者の働き方改革にもつながる。かかりつけ医機能の実装は、これからも医療提供体制改革の重要な課題として位置付けられるだろう。(談) 」

 

 

NPO法人開業支援塾21 代表理事 小川裕司

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