2021.7.19
高田塾 「新型コロナウイルス感染症の第5波の蔓延を憂う」
東京五輪・パラリンピック開催間近となるなか、
高田塾「新型コロナウィルス感染症の第5波の蔓延を憂う」に参加してきました。
当日行われた3つの講演を少しご紹介したいと思います。
第1部 國土典宏氏:国立研究開発法人国立国際医療研究センター 理事長
「Covid-19感染症に対する、NCGM国立国際医療研究センターの包括的取り込み」
日本国内では感染症に対する基本的な素地が少ないうえに、人材不足や治験等の課題がある中、感染情報バンク始動に向けて、感染症患者の検体や治療の経過の情報を一元的に管理し、大学や企業に提供する国のデータバンク事業が月内に始動。まずは新型コロナウイルス感染症を対象にデータを集め、年度内に1万人分を目指し、患者のゲノム(全遺伝情報)解析も実施してることを伺いました。
早ければ秋から大学や企業にデータを提供し始め、診断法や治療法の開発に活用してもらうとのことです。
国が中心となって感染症研究のインフラを整えることで、迅速な治療法や薬、ワクチンの開発につなげるのが狙いで、これまで各大学や医療機関でばらばらに管理される中、分析できる人も限られ研究費が不足すれば保管が打ち切られるなどの問題が解消されるものと期待を込めたいと思いました。
第2部 大曲貴夫氏:国立研究開発法人国立国際医療研究センター 国際感染症センター長 DCC科長
「Covid-19の臨床像に関する治験と診断・治療の現状」
重症度と致命率は、検査体制・医療体制・ウィルスの型・羅漢率の年齢構成で変化するという内容を示されました。また、医療従事者では家庭や地域での密生な接触のほうが、職務上での接触よりもCovid-19感染率が高いことを、データーに基づき説明頂きました。(医療従事者に対する間違った偏見を持つ方に聞いてもらいたいものです。)
Covid-19回復者における心筋障害のデーター、治療においては、呼吸不全なし・呼吸不全あり・重度呼吸不全 においての、抗ウィルス薬・免疫調整薬・抗凝固薬等の在り方と、血液検査を用いた、Covid-19の重症化予測を示されました。(インターフェロンラムダ3が高値となると重症化)重症化を防ぐために広く活用されることを期待します。
第3部 満屋裕明氏:国立研究開発法人国立国際医療研究センター 研究所所長 理事 米国国立衛生研究所・米国国立癌研究所レトロウィルス感染症部長
「Covid-19感染・ワクチンが惹起する中和抗体とCovid-19治療薬の開発」と題して、研究成果を説明していただきました。
(講演中は、なんとなくわかったつもりでしたが、基本的なリテラシーがない私には翌日には???の状況でありましたが。どのような内容であったか理解がそうとうあやしいですが・・・・)
COVID-19のメカニズムは、新型コロナウイルスSARS-CoV2のスパイクS1(レセプター結合部位BRD)が細胞膜ACE2受容体に結合しウィルスが侵入、感染性が増大するとされる。とのことで、Phizerワクチン接種によって作られた中和抗体は、このウイルスのスパイクに融合してウイルスが受容体に接着するのを阻止し、COVID-19発症・重篤化・死を抑止するということだそうです。Phizerは2回接種でCOVID-19発症を16週、95%ブロック、モデルナは17週、94%ブロックするというデータを示されました。
そして、BNT162b2Phizer被接種の医療従事者のデータを収集した結果を幾つかご紹介いただきました。
・日本人における中和抗体活性値と注射部位の疼痛、発熱の程度との相関関係は殆どない。
・接種で得られる中和抗体活性値はCOVID19回復後血漿の中和抗体値よりも2.3倍高い。
・接種で得られる中和抗活性は女性で優位に高い。
・ワクチン接種で獲得される中和活性の半減期は約2か月。6~7か月後には殆ど失われる。 等
また一方で、ゲノム編集技術を用いた新規SARS-CoVモデルマウスの開発に成功し、高い中和活性を有する回復者血漿のみの輸注療法がウイルス量を減少させることがデータで証明され、NCGMでヒトによる臨床試験も開始されたとのことは、治療薬として大きく期待されます。
最後に、日本人のBNT162b2Phizer接種による中和抗体の変異株に対する活性が低いこと、抗ウィルス治療薬開発の必要性を伺いましたが、講演中に日本ではサイエンスとしての思考力が欠如と危惧されてたのが強く印象に残った次第です。
講演に参加して痛感したのは、日本では「科学的スポークスマン」が不在であるということです。
日本政府の情報提供の在り方に足らないのは、専門家が科学的な説明をし、テクニカルなファクトを国民に説明する必要があると思います。
NPO法人開業支援塾21 代表理事 小川裕司